ドナルド・トランプ大統領の就任以降、新たな指導体制となった米国証券取引委員会(SEC)が、一部の仮想通貨企業に対する執行措置を撤回するのではないかとの憶測が広がっている。

2月24日時点のSECへの複数の提出書類によると、過去7日間でSECのクリプト・タスクフォースの当局者は、仮想通貨規制に関連する問題について業界関係者と会合を開いた。1月21日に発足し、コミッショナーのヘスター・ピアース氏が率いるこのタスクフォースは、業界団体「Crypto Council for Innovation」、インフラ提供企業「Zero Hash」、仮想通貨投資企業「Paradigm Operations」、そしてストラテジー社のマイケル・セイラー氏と会談した。

トランプ政権下のSEC、仮想通貨企業への執行措置を撤回する可能性 image 0

Feb. 21 memo on SEC meeting with Michael Saylor. Source: SEC

これらの議論に関与した企業および個人は、SECに対し、仮想通貨の多くが証券に該当するとするこれまでの立場を再評価するよう求める文書を提出した。SECは現在も複数の企業に対する執行措置を進めており、その大半は前委員長のゲーリー・ゲンスラー氏のもとで提起されたものだ。しかし、ロビンフッド・クリプトとオープンシーに対する調査はすでに終了しており、仮想通貨取引所コインベースへの措置も撤回される可能性がある。

今回の会合は、SECのクリプト・タスクフォースとブロックチェーン協会、Jito Labs、マルチコイン・キャピタルなどの代表者との議論に続く形で行われた。現時点では、SECが現職のマーク・ウエダ委員長のもとで新たな規制方針を策定するのか、それとも米上院が正式な委員長を承認するまで待つのかは不明だ。次期委員長としては、元SECコミッショナーのポール・アトキンス氏が有力視されている。

2月21日に発表された「There Must Be Some Way Out of Here(ここから抜け出す方法があるはず)」と題する声明の中で、ピアース氏はSECが仮想通貨に適した規制枠組みを検討するにあたり、一般からの意見を求めた。同氏は、仮想通貨が必ずしも証券であるとは限らないことを指摘し、プロジェクトが管轄権の問題に対処できるよう「規制サンドボックス」の導入を検討すべきだと提案した。

「仮想通貨寄りのSEC」か、それとも業界への屈服か?

上院で正式に承認されたSEC委員長が不在の状況が続く中、設立から1か月ほどのクリプト・タスクフォースは、業界を支持するような規制・法的措置を進める姿勢を示している。この方針の転換は、業界に対する規制障壁の撤廃を公約に掲げ、大統領就任直前には自身のミームコインを発行したトランプ氏の影響が色濃く反映されていると考えられる。

2月19日、SECは仮想通貨企業に対する物議を醸していた証券ブローカー規制の一部を無効化するため、裁判所に対し自主的な控訴取り下げを申請した。この控訴は、ゲンスラー氏がSECを離れる前に提出されたものである。

2月24日時点で、上院銀行委員会はSEC委員長候補であるアトキンス氏の指名に関する公聴会の日程を設定していない。トランプ政権下では、他の指名人事も党派に沿って進められており、ヘッジファンドマネージャーのスコット・ベッセント氏が財務長官に指名されるなどの動きがある。