トランプ政権、市場暴落を利用し利下げを狙うか ── 市場関係者の見解
トランプ政権は意図的に株式市場の不確実性を高め、米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長に利下げを迫ろうとしている可能性があるとの説が浮上している。
この戦略によって、米国が今後数カ月間に返済を予定している約7兆ドルの債務を再調達する必要がなくなる可能性が高まると、ビットコイン支持派の市場評論家であるアンソニー・ポンプリアーノ氏が3月10日に Xへ投稿した 。
ポンプリアーノ氏は、「ドナルド・トランプ大統領とスコット・ベッセント財務長官は、自ら行動を起こし、資産価格を急落させることでジェローム・パウエル議長に利下げを迫ろうとしている」と述べた。同氏はプロフェッショナル・キャピタル・マネジメントの創業者兼CEOであり、「The Pomp Podcast」のホストも務めている。
1月下旬、パウエル議長はFRBの政策金利を現行の4.25%~4.50%に据え置くと発表し、トランプ氏の利下げ要求を退けた。
ポンプリアーノ氏によると、最近の市場の混乱はトランプ氏の関税政策が一因となっており、同時に10年物米国債利回りを引き下げることで債券市場を有利にしようとする動きの一環と考えられる。
実際、10年物米国債の利回りは1月の4.8%から現在の4.21%まで低下しており、ポンプリアーノ氏は「トランプ氏の戦略が狙い通りに進んでいる兆候だ」と指摘している。
市場全体が急落、仮想通貨はさらに大きな打撃
ポンプリアーノ氏の見解の正否はさておき、株式市場は急落し、仮想通貨市場はさらに大きな下落に見舞われている。
米国の主要市場インデックスファンドも大きく下落しており、3月10日にはステート・ストリートのS&P500インデックスファンド(SPY)が2.66% 下落し 、ナスダック100は3.8% 下落した 。
両指数は過去1カ月でそれぞれ7.32%および10.7%の下落となっており、ビットコイン(BTC)は過去最高値の10万8786ドルから27.4%下落。仮想通貨市場全体の時価総額は、12月17日以降で1.2兆ドル以上が失われた。
このまま市場が下落を続ければ、「最初に折れるのはどちらか」という状況に突入するとポンプリアーノ氏は指摘し、トランプ氏とパウエル議長の対立が激化する可能性を示唆した。
トランプ氏の発言が示唆する「利下げ圧力」
トランプ氏はこうした戦略を公に認めてはいないものの、ポンプリアーノ氏は3月9日にFOXニュースで行われたトランプ氏の インタビュー に注目している。
トランプ氏はインタビューの中で、「金利が高いと誰も金を借りられない。そんな状況では誰も富を築けない」と述べている。
ポンプリアーノ氏は、利下げが米国の消費者にとってもメリットがあると指摘し、次のように述べた。
「大きな目標は金利を引き下げることだ。金利が下がれば安価な資本へのアクセスが可能になり、経済活動が活発化する。人々に安い資本を与えれば、それを活用して経済を動かしていく。」
CME FedWatchによると、FRBが3月19日の次回会合で金利を4.25%~4.50%の範囲に維持する確率は96%と高い。
しかし、5月7日の会合では利下げの確率がほぼ50%となっており、市場はFRBの次の動きを慎重に見極めている。
FRBは通常、インフレが高水準にある際には利下げを回避する傾向にある。なぜなら、FRBの主要な目的のひとつが物価の安定を維持することだからだ。
しかし、一部の市場関係者は「トランプ不況(Trumpcession)」と呼ばれる景気後退が発生した場合、FRBは利下げを余儀なくされる可能性があると指摘している。
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