金融庁、暗号資産を2類型に分けた規制検討を提案
新たな規制枠組みに関する意見募集開始
金融庁が、「暗号資産に関連する制度のあり方等の検証」の結果をまとめたディスカッション・ペーパーを4月10日公表した。
今回公表されたディスカッション・ペーパーは、2024年度に実施された検討結果をもとに、広く意見を募集することを目的として作成されたものだ。
金融庁は、近年の暗号資産に関する取引の実態を踏まえ、制度の見直しのあり方について検証を行ってきた。
今回のディスカッション・ペーパーにて金融庁は、暗号資産(仮想通貨)に関する課題への対応策として、「デジタル資産に係る総合的な法制度を整備する選択肢もあり得る一方、できるだけ早期に現状の課題に対応していくためには、既存の法制の中で対応を模索していくことが重要」との見解を示した。
また金融庁は、情報開示の不備や投資詐欺、価格形成や取引の公正性など、現在顕在化している制度的課題は、金融商品取引法(金商法)で従来から取り扱ってきた領域と親和性があるため、まずは金商法の仕組みや法執行(エンフォースメント)を活用することが現実的な対応であるとした。
規制の見直しにあたっては、暗号資産の性質・特殊性を十分に踏まえる必要があり、また、グローバルに流通する暗号資産の特性を考慮し、国際的な規制の整合性にも配慮する必要があるとの指摘された。
また金融庁は、規制見直しを検討する際に、暗号資産を機能や性質で区分し、「類型①:資金調達・事業活動型」と「類型②:非資金調達・非事業活動型」の2種類に分類して検討することが適当ではないかと提案している。
「類型①:資金調達・事業活動型暗号資産」は、ICOやトークンセールなど、資金調達の手段として発行される暗号資産だ。調達された資金は、主に特定のプロジェクトやイベント、コミュニティ運営などの事業活動に活用されることが想定される。例として、一部のユーティリティトークンがこれに該当する。
一方、「類型②:非資金調達・非事業活動型暗号資産」は、資金調達を目的としない暗号資産であり、発行者が存在しないか、存在しても事業資金の調達とは無関係なケースを指す。代表的な例として、ビットコインやイーサリアムなどが挙げられている。
この他、ディスカッション・ペーパーでは今後の検討課題として、インサイダー取引規制の導入検討や、ステーキングやDEX(分散型取引所)、MEV(最大抽出可能価値)への対応なども挙げられている。
なおMEVとは、マイナーやバリデーターがトランザクションの順序や選別を操作することで、通常の報酬とは別に得られる追加利益のことを指す。
金融庁はこのディスカッション・ペーパーへの意見を5月10日17:00まで受け付けている。
金融庁は、「わが国において暗号資産取引市場が健全に発展するためには、利用者保護とイノベーション促進のバランスが取れた環境整備が重要である」と強調。寄せられた意見をもとに、今後の具体的な制度改正や必要な施策の検討を進めていく方針を示している。
日本における暗号資産制度整備の経緯としては、2016年に資金決済法を改正し、世界に先駆けて暗号資産に関する規制を導入。交換業者の登録制、本人確認義務(KYC)、資産の分別管理など利用者保護の枠組みが整備された。
その後も、匿名性の高い通貨や業者の内部管理不備、流出・流用といった問題を受け、2019年の法改正では、広告・勧誘規制の強化、コールドウォレット管理の義務化、事前届出制の導入、ICOトークンの金商法適用明確化、デリバティブ取引・不公正取引の規制などが導入された。
2022年には FATF(金融活動作業部会)の勧告を受け、「トラベルルール」を導入。暗号資産の送金時には、送金元および送金先の本人情報を相手方業者に通知することが義務づけられた。
また、2025年に提出された法案では、資産の国外流出を防止するための「国内保有命令」の導入や、媒介業務に特化した「仲介業」制度の新設を含む、資金決済法の改正案が国会に提出されている。
参考: 金融庁
画像:PIXTA
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この記事の著者・インタビューイ
髙橋知里
「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
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